神社

庭の鳩に餌をあげないでください

便利の話

なんだかたくさん書きたいことがある。筆が走るというのだろうか。パケットが飛んでるだけだけど。常日頃からこんなに書くわけじゃないので、僕も、君も、期待しないこと。

便利になった。なったなぁ。世の中すごく便利になった。僕は上京するまで電車という電車にひとりで乗ったことはなく、上京して初めて電車にまともにのった。切符を買って、自動改札機でピピッと。便利だ。でも今時モダンなのはスイカらしい。僕はウリ科アレルギーなのだ。スイカ。便利なスイカ。

毎日通勤する。スイカで改札を通る。ピッて。たまにブザーがなる。お金が入ってない。僕のスイカは野菜じゃなくて、カードなので、中身にどれだけ入っていても大きくならないし、小さくもならない。財布を取り出しながら重さで小銭の量を、厚みでお札が何枚入ってるかを予想する。千円札が、一枚あるので、スイカに入れる。厚みが少しなくなって、僕はスイカで改札をくぐる。

便利だよなぁ。スイカをかざすとゲートが開く。スイカの中にお金が入ってて、通ると減る。スイカもどっかをくぐらせたら種が減るようになったらもっと便利だと思うなぁ。ダジャレばっかり言ってるな。これじゃ便利じゃなくて洒落の話だ。

洒落たスイカを財布に入れて、僕は通勤している。今も僕の財布の中にスイカが入ってて、僕はスイカの中にいくら入ってたか覚えてない。多分、1000円くらい。家に帰るのには450円もあればいいから、スイカで帰れる。現金をスイカにいれなくていい、多分大丈夫。でも、ちょっと怖いから、後ろに人が並ばなさそうなゲートを選んでくぐる。音がなってゲートが開かないと、すごく申し訳ないきもちになる。僕がスイカにお金を入れなかったので、音がなって、ゲートは開かない。うしろの人が、僕を見る。

スイカの中にいくら入っているのか、僕はいつもわからない。お財布は見ただけで小銭でぶくぶく太ってるのとか、今日は飲みに行くから、お金をくずして、千円たくさん入ってるな、とか。スイカはいっつも平べったいままだから、僕はこいつがちょっと嫌いだ。入ってる額に応じて、光るくらいの親切心があったっていいのに。僕はスイカが好きじゃない。アレルギーだから。

世の中もっとモダンになって、最近はスイカにオートチャージがついたらしい。自動でスイカにお金が入るそうだ。便利だなぁ。とうとうお金入れなくて良くなったのか。確かに。そりゃ、乗るんだし、使うんだし、自動で入ったら、ね、便利だもん。そういえば通帳も、キャッシュカードも、入ってるお金がいくらでも大きくならない。

厚みが消えてく。便利になっていく。いいことだと思う。僕はきっと、そのうちオートチャージのスイカを買う。まだ買わないけど、きっと買う。便利だから、買う。使う。きっと電子マネーだって遠からずもっと普及して、もっと使われるようになるんだろう。世の中は進化してて、便利になっていく。

僕は一応これでも、技術者だから、技術者なので、世の中を便利にする方向に力を入れる。もっと、簡単に、使いやすく、便利に、意識的なことを、無意識にするんだ。いいことだ。いいことなのだ。いいことだったら、いいのにな。

軽くなった財布は、寂しいんじゃなくて、便利なんだ。さみしいなぁ。